ここでは実務上の流れを例として、Webサイト制作手順の一例を紹介します。
Web制作の流れ
- 目的を定める・戦略を練る
- 要件確認(必要な機能、サイトの目的、更新業務を誰が行うか、など)
- 制作方法の検討 HTML+CSS、Javascript、CMS導入、サーバー・ドメイン
- 情報建築(情報の整理、ユーザーの導線確認、…)
- サイトマップ
- ワイヤーフレーム
- デザイン・素材制作、試作
- コーディング(HTML、CSS、など)
- 確認・修正
- 完成・運用開始
- 日々の更新
- 改修、リニューアル
- ・・・
→Webサイトは完成して終わりではなく、完成してからも育てていくメディアです
制作方法の検討
サイトの公開方法、運営方法(更新頻度、公開後に誰が更新作業を行うか、メンテナンスに時間と費用をかけられるか…)などで考えます
- HTML・CSSのみで制作
- 比較的小規模サイト向け(5〜10ページ程度)
- 完成後の更新・メンテナンスが少ない場合に向いている
- 完成(納品後)サイトの更新作業には、HTML・CSSのスキルが必要
- CMSの導入
- サイト規模が大きい(何十ページ〜)
- 頻繁に投稿(記事)が追加される予定があるサイト向け
- 完成(納品後)は、HTMLなどの専門スキル不要で更新できる
- 既存テンプレートが用意されていることも多く、テンプレートのみを使った構築も可能
- カスタマイズには、HTML・CSSに加え、他のWeb言語の技術が必要
- PHPやデータベースを扱えるサーバーが必要
- 定期的なアップデートなどセキュリティ対策が必要
- サーバー、ドメインの扱い
- 新規契約
- 指定のサーバー・ドメイン
CMS(Contents Management System)
タグやカテゴリーを使って、サイト内の記事・ページを管理できるため、たくさんのコンテンツを扱うサイトを構築するときに用います。また、記事やページの更新には、HTMLやCSSのような専門スキル不要で編集が可能なため、納品後に、担当者が更新する場合にも向いています。
デザイン部分は、テーマ・テンプレートとして管理し、内容(ページ・記事)とは分離しています。サイト全体のデザインを一度に変更できるため、規模の大きいサイト構築の場合にも、デザイン変更をしやすくなっています。ただし、構築やカスタマイズには専門的な技術が必要なことが多いです。
CMSの例
既存テーマを使って記事・ページを作る作業自体は、比較的容易です。プラグインによって機能拡張が可能です。テーマのカスタマイズにはPHPのスキルが必要になります。インストールするには、PHPとデータベース(MySQL)が使えるサーバーが必要ですが、Wordpress本体は、オープンソースであり、無料で使うことが可能です。
中規模〜大規模向けCMS。企業が開発・管理しているため、セキュリティ対策の対応しやすい面があります。データベース(MySQL)が使えるサーバーが必要です。
個人ライセンスは無料(通常ライセンスは有料)です。
【参考】ノーコード・ローコード
コーディングやプログラミングをせずに構築ができるノーコードツール、少ないコード記述だけで開発できる、ローコードツールの活用場面も増えています。Webサイトだけではなく、アプリ、業務システムなどの開発向けのツールがあります。Webサイトであれば、Wix、studioなどがノーコードツールとして挙げられます。
使いこなすためには、ツール自体の学習コストがかかり、今後も新たなツールが登場てくることが予想されます。まずは基本的な技術の取得や、制作の上流工程(戦略・要件・構造)が重要です。
情報建築(Information Architecture)
UXデザイン(ユーザー体験)の5段階モデル
Webサイトを例に考えるのであれば、ユーザーにとって使いやすい(よい体験のできる)Webサイトに必要な要素。
情報建築は、3段階目に当たる要素。
→参考:The Elements of User Experience
構造を考えるとは?
例えば…
▽情報の整理
- ナビゲーションにどのような項目が並ぶか (初めて見た人にも伝わる言葉になっているか)
- マジカルナンバー7±2 →近年では4±1(たくさんの項目が並んでいても認知できない)
▽ユーザーの導線確認
- ターゲットユーザーの設定
- ユーザーシナリオ
どのような順番で閲覧するか、迷わずたどり着けるか、どのような設計であれば問題なく目的達成できるかを考える
必要なページ(とタイトル)、順番の洗い出しをする
サイトマップ
- 構造を樹形図として表現した図、サイト構造図
- 参考:Google画像検索:サイトマップ
▼作図に使うソフトの例
- Adobe Illustrator
- Powerpoint、Keynote
- Google スライド、図形描画
- その他、図形描画ができるサービスやソフトウェア
※規模が大きくなると、樹形図での表現が難しくなるため表で作ることもあります
業務の上では、クライアントからサイトマップを受け取ることもあります。ヒアリングをしながら、最終的な項目名や、分類を決定していきます。
画面設計の前提
レイアウト
Webサイトは閲覧する側の環境が様々なため、色々な環境でも閲覧できるように考慮する必要があります
ページを構成する要素
- ヘッダー(Header)
- サイト名、ロゴ、キャッチコピー、サイト内検索など。
- ナビゲーションもヘッダーの一部になることもある。
- ナビゲーション(Navigation)
- サイト内のページを移動するために必要なリンクをまとめたもの
- コンテンツ(Contents)
- ページの内容
- フッター(Footer)
- 著作権情報、連絡先、関連リンクなど
文字を読む向き
左→右(左上が基点になります)
【参考】右から読む文字を使ったレイアウト
Webコンテンツを読む際のF字パターン(2006)
- アイトラッキング(Eyetracking)調査 = 視線計測
- 数千のサイトを見るときの視線を232人分記録したところ、一定の傾向を示す
▼原文リンク
- F-Shaped Pattern For Reading Web Content (original study)
- F-Shaped Pattern of Reading on the Web: Misunderstood, But Still Relevant (Even on Mobile) ※2017年の調査
F字パターンへの対策
- 重要な点は最初の2段落に
- 見出し・小見出しを使う(情報を得られる言葉を使う)
- 視覚的なグループ分けをつくる
- 重要語やフレーズを太字に
- 形式を変えたリンク
- 箇条書き(記号または数字)を使う
- 不要な内容を削る
ワイヤーフレーム
ワイヤー(線)によるフレーム(枠)。画面設計の把握に使う。
取引先や、チームとの共有目的はもちろんのこと、自主制作の場合も、サイト構築前に方針を明確にするために必要な工程。
通常、レイアウトのパターン数作る。(トップページ用と、その他下層ページ用など)
テキストや画像はダミーを用いる。
ワイヤーフレーム・デザインカンプの作成に使うソフトの例
- Adobe Illustrator
- Adobe Photoshop
- Adobe XD
- Figma
AdobeXD
Webやアプリのワイヤーフレーム、モックアップ(模型)制作に特化したAdobeソフトウェア。
デザイン作業だけでなく、画面遷移の設定をして、リンク動作を擬似的に表現したり、ほかの人とデータ共有が可能です。HTMLへの書き出しには対応していませんが、開発プレビューをすることで、CSSの書き出しは可能です。
XDは図形描画機能が限られています。ロゴタイプや、アイコンなど、複雑なパーツ作りはIllustratorで行い、配置をXDで行う、というように使い分けるのがおすすめです。
完成後の話〜アクセス解析
Webサイトは完成して公開したら終わりではなく、常に新しい情報にアップデートとして、更新していきます。より使いやすく、わかりやすいサイトにしていくための方法として「アクセス解析」を行います。サイト訪問者のデータを取得し、サイトの課題を見つけ、改善へとつなげていきます。
Google Analytics
Google Analyticsは、Googleが提供するWebページのアクセス解析サービスです。Googleアカウントがあれば利用可能です。